ファシリテーターの声 (田中 結夏さん)

田中 結夏さん

認定を取った経緯

田中 結夏さん私は、小さい頃から人と人を繋げる役目に関心があったり、面白い事や興味深い事を周りの人と共有したいという気持ちを強く持っていました。例えば、小学生の時に自分のクラスに転校生が来ると、頼まれてもいないのにその子の手を引き学校中の自分が面白いと思う場所を紹介したり、新聞係でもないのに自ら毎日発見した関心のある出来事を新聞にまとめて教室に貼り出して、それをコミュニケーションのきっかけにしてみたり…という、何とも好奇心旺盛且つおせっかいな子どもでした。
そんな子どもの頃に観たミュージカルの感動が忘れられず、高校生の頃から舞台俳優を志し、舞台芸術科のある高校に進学しました。大学では俳優として人間についてより深く学ぶため、そして子ども達とミュージカルを創りたいという夢を実現させるべく、子ども学科に入学しました。入学後、勉強していくうちに保育の分野にも深く関心を持ったので、子どもに関する専門性を高めるためにそのまま幼稚園教諭と保育士免許も取得しました。
その知識をもって改めて演劇の勉強をしようと思い、大学卒業後更に演劇の学校に進んだのですが、そこで聾者の(耳の聞こえない)同級生と出会いました。この出会いが、私の人生を大きく変えてくれたのです。彼女の周囲を引き寄せるユーモラスな人柄と、その手から溢れ出る手話という言語にすっかり魅了され、その出会いから一年後、私は演劇学校を中退するほど手話の世界にのめり込んでいました。しかし、こんなに魅力的な彼女を含め、障害を持つ方が一歩社会に出ると“マイノリティー”といわれる存在となり、社会の理解や知識のなさから生きづらさや不便なことが生まれている現状に、深い疑問と悔しさを感じました。健常者にとっても、障害者にとっても、お互いに交流する機会がないからどのように接したら良いのかよくわからない…わからないから、話せない…そのために、なかなかお互いを知り合うことができない…という課題がある事を知り、私は、育ってきた背景やアイデンティティが違う人同士が知り合える機会をつくることが多文化共生に大切なのではないかと考え始めました。そして私にできることは何だろうと思い、今まで勉強してきた「演劇」「保育/教育」「手話」の知識や経験から、人と人を繋げるために活用していく方法を考えるようになりました。
ただ、ビジョンはあるものの、どのように実現していけば良いのか具体的にわからなかったので、まず人と人を繋げる場づくりを学ぶために、WSD(青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー育成プログラム)を受講しました。そこでは多様な分野で活躍されている方々と共に、WS(ワークショップ)を通して人と人を繋げること、設定されたねらいをWSを活用して達成していくことについてじっくりと幅広く学びました。そしてその繋がりでドラマケーションを紹介いただき、演劇の要素を取り入れながらのコミュニケーション教育という分野に大変関心を持ちました。また、ドラマケーションは私の思い描くビジョンに繋がる可能性を強く感じ、初級認定講座を2019年夏に受講しまして、認定をいただきました。

どこで活用しているか

認定をいただいた後は、高校などの教育現場のドラマケーションの授業にて活用しています。例えば、入学したばかりの1年生のクラスでは、どのような仲間がいるかをお互いに知り合うことができるワークを取り入れたり、又、ある程度仲間のことが分かっている3年生のクラスではみんなで協力して一つのことを達成する少し難易度の高いワークを取り入れたりと、対象のクラスによってプログラムやねらいを変えています。授業後に、「今まで知らなかった仲間の新たな一面が見えた」「クラス全員で一つのことを達成できたことが楽しかった」などの声をいただくと、ドラマケーションの授業がとても有意義であることを実感します。
また、これからの私の展望としては、ドラマケーションに手話を取り入れ、ろう学校での実施や、健聴児とろう児合同での実施など、新たなかたちでのドラマケーションの展開を考えています。そして、より多様な人々を繋げていく場づくりを探究し、ドラマケーションを通じて言語、性別、国籍、文化…などお互いの様々な違いを知り仲間になることで、それぞれの人生がより豊かになる社会の実現も目指していきます。

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