ドラマケーション(演劇×コミュニケーション)の現場に立っていると、ふと「今の自分は、この場にどんな空気を注ぎ込んでいるだろうか?」と自問することがあります。単なる進行役ではなく、場の熱量をコントロールする一人の表現者として、自分をメタ認知してみる。すると、そこには「父性・母性・男性性・女性性」という4つの機能が、まるでグラデーションのように混ざり合っていることに気づかされるのです。
1. 土台を作る「垂直」の軸:父性と母性
まずは、場の「安心感」と「規律」を司る垂直の軸について考えてみたいと思います。
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母性という「受容の土壌」
ワークショップの冒頭、参加者が不安げなとき、私は「母性」のスイッチを入れているように思います。何を言っても否定されない、ただそこにいていいという無条件の肯定。それは「ゆりかご」のような安心感であり、表現が生まれるための肥沃な土壌を作る作業だと言えるのではないでしょうか。
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父性という「境界の柱」
しかし、受容だけでは場が「なあなあ」になり、成長が止まってしまう。そこで必要になるのが、ルールを厳守させ、時には厳しい課題を突きつける「父性」のエネルギーです。境界線を引くことで、参加者は逆にその枠組みの中で自由に動けるようになる。いわば「安全な冒険」を保証するための柱のような役割だと思うのです。
2. 変化を生む「水平」の軸:男性性と女性性
次に、場を動かし、深化させていく水平の軸に目を向けてみます。ここで面白いのは、「男性性」と「女性性」の対比です。
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男性性という「突破のエンジン」
場が停滞し、予定調和に陥ったとき、グイッとギアを入れるのは「男性性」の役割でしょう。目的意識を明確にし、論理的なフィードバックで停滞を打ち破る。この推進力があるからこそ、ワークは「ただの遊び」から「深い学び」へと昇華されるのだと感じます。
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女性性という「共鳴のゆらぎ」
一方で、今回改めて意識したのが「女性性」の重要性です。これは、ゴール(結果)に向かって直線的に進むのではなく、今ここにある「プロセス(過程)」そのものを慈しむ力です。参加者の小さな変化に直感的に共鳴し、目に見えない空気のゆらぎをそのまま受け入れる。正解を急がず、カオスの中に留まるしなやかさ。これこそが、ドラマ特有の「ライブ感」を支える潤滑油なのではないでしょうか。
まとめ:自分の中の「4つのスイッチ」を使い分ける
こうして整理してみると、優れたファシリテーターとは、これらのエネルギーを固定された性格として持っているのではなく、現場の状況に応じて**「機能」として使い分けている人**のことではないか、と思うのです。
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不安な場には、母性で土壌を耕す。
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緩んだ場には、父性で規律を通す。
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停滞した場には、男性性で風穴を開ける。
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深まりゆく場には、女性性で共に揺れる。
自分の中にこの4つのスイッチがあると意識するだけで、現場での「居方」はぐっと自由になるはずです。「今の自分は、どのエネルギーを使いすぎているだろうか?」「次はどのスイッチを入れようか?」そんな風に自分をメタ認知しながら、これからもドラマケーションという多層的な場に向き合っていきたい・・・そんな風に考えています。
